新聞社崩壊

畑尾一知『新聞社崩壊』新潮新書、2018


著者は元朝日新聞社員。販売畑が長かった人。この本は、河内孝『新聞社 破綻したビジネスモデル』新潮新書、2007の続編のような本。河内孝は、毎日新聞記者で、このままでは新聞社の事業は継続できないことに警鐘を鳴らしていたが、この本もそう。しかし、2007年から10年以上がたって、新聞社の事業形態はぜんぜん変わっていない。それだけ危機は深刻だということ。

基本的な著者の主張は、紙の発行を維持して、あとはデジタルでやっていく。しかしそれが成り立つためには、大幅な値下げとコスト削減が必須だというもの。

著者の計算では、新聞社の決算数字は「残紙」つまり、販売店の利益圧縮のおかげで半ば粉飾されており、実際にはほとんど利益が出ていない状況。これは平均値なので、実際には利益が出ている社と破綻寸前の社に分かれている。全国紙では、毎日と産経はもう破綻寸前。地方紙でも、危ない社がリストアップされている。

しかし、これはまだ序の口で、購読者がどんどん減っている状況では、この現状維持もできない。しかし、新聞社は上場企業ではなく、利害関係者が株を持ち合っているので、改革のインセンティブがない。2020年代には、体力がない社から順番に潰れていく。新聞購読者が高齢化していく現状では、それも納得。

「残紙」の実態とか、販売店の経営とか、これでないとわからない内容が多く、非常に勉強になった。朝日、読売、日経や大きいブロック紙はともかく、人口減少地域の地方紙はいずれ野垂れ死にだろう。