性風俗のいびつな現場

坂爪真吾『性風俗のいびつな現場』ちくま新書、2016


風俗サービス業のルポだが、この本は、地雷、障害者、妊婦・母乳専門、熟女などの特殊な風俗業を扱っているのがめずらしい。

著者の論旨は、こういう種類の風俗(最底辺)にいる風俗嬢は、基本的にいろいろと問題を持っている人(メンタル、騙されやすい、意志薄弱その他)で、これは福祉の対象だということ。だったら、生活保護に入れればいいかというと、そういうものではなく、風俗業をやりながら、福祉、医療、法律相談のようなネットワークに入れていかなければ、どうにもならないという結論になる。

生活保護でもらったお金をすぐにパチンコですってしまうというようなことはよくある。底辺性風俗にいる人達の多くは、「これしかできる仕事がない」という人。そうなると、底辺性風俗の人に仕事をやめろというのは、この人達を単にヒマで孤立した人として放り出せということになる。

著者の言っている理屈はだいたいわかるし、性風俗は昔から、仕事のない女性が最後に頼るところ。逆に見た目がきれいで、心がまともな人は、稼げるだけ稼いでさっさと去っていく。それができない人が残っている。

とはいえ、これを実際に福祉や医療、特に行政がすくい取るのはたいへん。性風俗にまともに触りたくないのは、個人の心性の問題ではなく、それが社会規範だから。実際には規範から外れる人はいるので、それはしかたがないが、「公認ではなく、容認せよ」と言われても、実際に社会的支持がないのに、やり切るのはむずかしい。

著者がしようとしていることが意義のあることだというのはわかるので、努力は買うが、どうやってもたいへんなこと。