誰もが嘘をついている~ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性~

セス・スティーブンズ・ダヴィドウィッツ(酒井泰介訳)『誰もが嘘をついている ~ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性~』光文社、2018


ビッグデータ(この場合は検索語)分析で、人間行動をあぶり出すという本。質問紙調査では絶対にわからないこと、つまり人に見られないことを前提としてしていることが、検索語分析でみなわかるという内容。

「人が何を考えているのか」ということは、この手法でだいたいわかるということがわかった。お金のかかる質問紙調査は、もう対照データを取る以外には行われなくなるだろう。そもそも質問紙調査は嘘ばかり。人間には他人に対して本当のことを語るインセンティブがない。

こっちの方が、安価ではるかに多くのことがわかる。質問紙の長さに拘束されることもなく、地域や性別、人種も自在にコントロールでき、しかも今までの調査とはまったく違ったことがわかる。ゲイ人口はどのくらいの比率なのか?標本調査では2から3%。しかし、この方法だと、その答えが裏付けられるだけでなく、州ごとの違い(州法による同性愛に対する寛容度の差)、ゲイに寛容な州に引っ越す人の割合、高校生(引っ越せない)でのゲイ比率がわかる。しかも、ゲイ・ポルノ検索のストレート・ポルノ検索に対する割合をみれば、ゲイ人口比率は5%とわかる。

しかも米国内だけでなく、イランでのゲイ人口比率調査(これ以外の方法では絶対に不可能)もできるのだ。おそろしい。

著者は、検索語分析で、「社会科学は科学となる」と言っている。確かに、これだと実験が可能になるのだ。社会科学ではできないと思われていたことができた。これ以後、社会調査ではこの本が必ず引用されるだろう。