最貧困女子

鈴木大介『最貧困女子』、幻冬舎新書、2014


昨年出版されて、注目されている本。読んでみたが、読み通すのがきついくらいの、文字通り「最低辺の人間と生活」を描いた本。タイトルは「最貧困」となっているが、より正確には「最低辺」とするべきだろう。著者は、取材対象に人間的な愛情を持っている人なので、そのようには書かなかったということ。

最初のエピソードから、もうきつい。23歳、太め、父死亡、母家出、就職した会社は倒産、家賃が払えず借家は退去、消費者金融から借金した後、闇金から借りて、返せなくなり、失踪、というもの。

これでもまだましと思えるようなひどい境遇の話がえんえんと続き、気が滅入ってくる。社会の最低辺にいる人々は、「親、親族から援助を受けられない」「精神的に病んでいたり、まともな教育を受けておらず、職につけない」「公的、民間の支援につながれない」「恋愛依存」という環境にいる。

子供と離れたくない、自分の生活歴を他人に話したくないというような事情があるので、ほとんど他人や役所とつながれない。このくらい状況が悪いと風俗店に勤めることも断られるので、個人売春で日銭を稼いでいるという有り様。

著者は、最後に建設的な提案として、小学生、中学生の時期に「居場所」「シェルター」を提供すること、18歳以上の者には、性風俗業の存在を公認して、まともな給料と待遇を保証することを述べている。

しかしそういう提案が簡単に実現するものではないことも、著者はわかっており、最底辺にいる人間が、相手にされない、無視されることが多いということも理解している。ライターが職業とはいえ、病んでいる人とずっと接していると、自分も病が移ってくる。それでも続けているのだから、エライとしか言い様がない。