高学歴女子の貧困

大理奈穂子、栗田隆子大野左紀子水月昭道『高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか?』、光文社新書、2014


これはかなり切ない本。著者のうち、水月昭道は、『高学歴ワーキングプア』、『ホームレス博士』の著者で、この本はそれらの「女性版」。

著者らは、博士後期課程の単位取得退学または、中退者で、大野だけが学部卒(芸術系なので別枠)。

博士課程に在学を続けている理由が、日本学生支援機構からの奨学金の返済義務が在学期間中は生じないから(もちろん問題の先送り)とか、社会学会にゲストスピーカーとして呼ばれてパジャマ姿で、ヘルメットに「貧乏女」とペインティングして参加したとか、涙なしには読めない話が出ている。

女性の常勤大学教員はただでさえ少なく、「大学院重点化」の前から変わっていないこと、職が得にくい人文系の大学院進学者が多いこと、研究歴に2年以上の空白がある「非標準型」のキャリアパスを通る者が女性に多いこと、人文系、非標準型のパターンの中でも、男性に比べて女性が非常勤職にとどまる割合が高いこと、などが数字で示されている。女性で大学院(とくに博士後期)に進学すると、ただでさえ高い、どうにもならなくなる確率が男性に比べてもさらに高くなる。簡単にいえば、この人たちは、「ハズレくじをひいた」人たち。

後半にある、派遣を渡り歩く話、アート系の道を歩く話も、読んでいてつらくなる。結婚している人は、ある程度夫の稼ぎをあてにできるが、それも精神的に楽なものではない。そうでない人はさらに大変。

「お身体大切に」としか言えないが、著者らの人生の無事を願わないではいられない。