フェイクニュース

一田和樹『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』角川新書、2018


著者は、もとIT企業経営者、今はサイバー分野を中心とした作家。

題名は「フェイクニュース」となっているが、狭い意味でのフェイクニュースではなく、政治や戦争の道具として使われる情報工作の文脈で使っている。ハイブリッド戦争は、そうした工作を実態化したもの。

アメリカ、EU、ロシア、中国、その他の国を含めた、つまりどこでも行われているのが、ネットを利用した情報操作。その主目的は、自国の政権維持。個人が自分の考えで勝手にやっているというレベルではなく、国家や企業が自己利益のためにしていること。

実際に多くの人は、判断能力などなく、情報環境を変えられるとそのとおりに動いているので、これはそれなりに有効。

著者は、これは日本でも行われており、主に右寄りの方向に世論を振っていると書いている。日本だけがこういうことの例外とは考えられないのでそれはわかるが、例としてあげられている事実は、「世論操作が目的」とはいいにくいものも含まれているし、どのくらい人為的操作によっているのかも微妙なところ。

この辺は新書で全部片付けるのは無理。有益な本ではある。