部落問題入門 部落差別解消推進法対応

宮部龍彦、全国部落解放協議会『部落問題入門 部落差別解消推進法対応』示現社、2017


鳥取ループこと宮部龍彦の部落問題入門本。解放同盟とも人権連とも違う立場で書かれた本として画期的だし、この分野で読まれるべき本。

入門本として必ず書かれていなければいけないこと、つまり部落の起源と歴史について、解放同盟の公式の立場や、部落問題研究者の諸説を整理して批判している。これがまず重要。特に一時期、解放同盟が取っていた政治起源説が、部落問題全体を説明する一般論としては成り立たないことを明確に述べている。

また、この本でなければいけないこと、つまり部落解放運動の歴史、諸団体の系譜と運動方針、その違いについて書かれていることも重要。同和対策事業や、同対法、地対財特法以後の部落問題の推移についても遠慮なく書かれている。類書がないという意味で非常に貴重。

しかし残念なのは、注と文献リストがない。当然、言及している文献については本文中にそのように書かれているのだが、入門書である以上、文献リストは必要。

またもう一つ、部落差別解消推進法がなぜできたのかについての分析がない。この法律が理念法で、予算措置や罰則を伴わないことはすでに報道で言及されているのだが、だったらなぜ理念法が現在必要だということになったのか、誰が動いていたのかということについて分析がほしかった。

その2点を措いても、重要文献であることは確か。これが一般の出版社から出せないのが、日本の現実。