テロ後

藤原帰一(編)『テロ後』、岩波新書、2002

時事ネタについての本は鮮度が問題なので、いまさらこの本を読むのはどうかとも思うが、執筆者の評価のためには、あえて古くなってからの文章を読んでみることに意味があるだろう。12編の文章からなっているので、いちいちコメントすることは面倒だからしないが、西谷、岡の文章は単純な「平和ボケ」。三浦の文章は、アメリカの少数意見を過剰に持ち上げすぎ。杉田の文章は問題提起まではいっている。大澤の文章は同様のものだが結論が飛躍。最上の文章は国際法学者が非常事態において口にできるのはこの程度のものかというレベル。ホフマンと藤原の文章はそれなりに考えられてはいる。しかし当面どうすべきかという問題へのコメントがない。イラク戦争が起こってしまった後では、アメリカのインフィニット・ジャスティスに釘をさしておくことは意味があっただろうが、それを戦争反対または戦争に関与しないという方向で述べても、当事者に対する説得力に欠けるだろう。