「世界」とはいやなものである

関川夏央『「世界」とはいやなものである』、集英社文庫、2006

文庫化された元本は、2003年刊行。しかし内容は1980年代末から2003年までの東アジアについての雑多な文章を集めたもの。香港から広州、内モンゴル、ロシア極東部、それから関川のホームグラウンドである韓国についての文章がおもしろかった。韓国と北朝鮮が主な関心の対象だが、これだけいろんなところをまめに回るのは知的好奇心という以上のアジアに対する強い感情があるからだろう。
北朝鮮に対しては容赦ないことで知られる著者が、「世界」に書いた原稿(在日コリアンと日本の「責任」)の中で、「戦後責任」という言葉をさらっと使っていたことには驚いた。表題では責任という言葉が「」でくくられてはいるが、文中の戦後責任のほうはそうではない。「世界」の方針に合わせた、なんてことはないはずだと思いたいが…。