欧州左翼の現在

星乃治彦『欧州左翼の現在』、日本図書刊行会、2002

この本でいう「欧州左翼」は、社民主義勢力を含まない、共産党とその後継政党を指す。副題の「欧州統合と「グローバル化」の中のポスト・コミュニズム」のとおり、ドイツを中心としてはいるが、一応ヨーロッパ全体での左翼政党の状況がカバーされている。ざっと見た限り、「グローバル化反対」「弱者九歳と社会的公正」「資本主義に反対するラジカルな変革」といったところが共通の主張か。著者はそれに「平和主義(パツィフィズム)」を付け加えるが、これはドイツに特殊な主張で全欧州の左翼の主張とはいえないと思う。
ソ連、東欧社会主義圏の崩壊以後の左翼勢力の衰退は明らかで、彼らはほとんど政権参与の機会がないから、主張が急進的で現実的な政策をあまりだしていないのはやむを得ない。ドイツでも旧東ドイツ地域での不満の受け皿以上の役割を果たしているとは思えない。著者は「それでも左翼の灯は消えていない」ことを強調したいようだが、むしろ「左翼がこれ以上拡大するチャンスはあるのかどうか」について考えるべきではないのか。