ザ・ペニンシュラ・クエスチョン

船橋洋一『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』、朝日新聞社、2006

長く積読状態になっていて、ようやく読めた。世評に違わぬ力作で、02年10月のケリー訪朝以来の第二次北朝鮮核危機を詳細かつ立体的に再現している。はじめのほうの章で、日本、アメリカ、ロシア、韓国、中国の対北朝鮮政策を取り上げ、その後六カ国協議を通じた北朝鮮との交渉問題を扱う。この構成によって、各国が北朝鮮に対してどういう視点と政策をとってきたかを頭に入れつつ、六カ国協議の内容を深く理解することが可能になっている。取材対象は、北朝鮮を含む六カ国協議の参加国すべての重要人物におよび、しかも機微にわたる内容も深く把握されている。核危機の節目節目で各国がとった行動の理由を、他の国々の行動と関連付けながら、解釈することができる。
著者の結論は、第二次核危機は、各国による政策の失敗の積み重ねとしてもたらされたというものだ。アメリカは交渉に戦略的方針を持たないまま政府内が分裂して動けず、韓国は右往左往、日本もチャンスを捉えることができなかった。中国は実務的な姿勢でポジションを高めたが、状況全体の悪化を止めることはできない。北朝鮮は、自ら墓穴を深く掘り続けている。
本の記述は、2006年7月の北朝鮮ミサイル発射事件で終わっている。その後、核実験と2月の六カ国協議での急展開を経て、事態が今に至っているが、本書をよく読めば、これからの道がいかに困難かを考えざるを得ない。戦争もなく、平和もない状態でずるずると時間だけが進む(著者はそうでないことを期待しているが)シナリオがやはり一番ありそうな感じがする。