核武装論

西部邁核武装論』、講談社現代新書、2007

西部邁が日本の核武装について正面から議論する本。となればおもしろくないわけがない。北朝鮮の核開発このかた、日本で議論された「核武装論」のほとんどが箸にも棒にもかからないものであり、他方、ほとんど思考停止に近いような核武装論への拒否が蔓延していた状態に、強いインパクトをもつ本である。著者の以前からの態度からぶれていないので、ことさら新しい議論をしているわけではない。しかし核武装について議論しながら、国際政治の重要な部分を掘り下げて語っており、国際政治学(特に日本の)に対する痛烈な批判にもなっている。核武装の可能性について考えないことが、国際政治における日本の「自主性の放棄」に通底しているという著者の指摘は確かに正しい。日本で意味のある核武装論がほとんどなされていないことは、アメリカの拡大抑止の有効性をみじんも疑わない姿勢とあわせて、日本における国際政治についての議論の思想的な足腰の弱さを示す最たる例だと思う。