靖国史観

小島毅靖国史観』、ちくま新書、2007

靖国神社のよって立つ価値観を水戸学にさかのぼって明らかにし、その「天皇のための英霊」思想の起源を論じる本。著者は宋学の研究者なので、儒教思想の日本における受容史についてはいろんな観点から突っ込んだ叙述をしている。水戸学の性格についてはよくわかっていなかったので、非常に勉強になった。国体という概念の起源とか、神皇正統記大日本史の正閏論とか、おもしろい話が多い。
ただ、著者が冒頭であげている、「三種の神器を笑う近代主義者」がわりきれないものがいったい何なのか、なぜ靖国神社が人々を引き寄せるのか、について、著者がどう考えているのかを具体的に書いて欲しかったという気がする。