未完の明治維新

坂野潤治『未完の明治維新』、ちくま新書、2007

維新史を新しい観点から見直す本。「富国」「強兵」「議会」「立憲」がそれぞれ異なる政治課題であって、その主張者たち、大久保、西郷、板垣、木戸らがどういう対立と連携の関係にあったか、それがどのように変化していったかが生き生きと描かれる。維新史の高校教科書レベルの理解からは、はっきりと踏み出した内容で、非常に面白い。いままでの倒幕佐幕の幕末史、藩閥対民権の維新史といった単線的な理解がいかに底の浅いものであるかを再認識させられた。日本近代史にそれほど明るくなくても読みやすく、含蓄が深い本。