日朝関係の克服

姜尚中『日朝関係の克服』、集英社新書、2003

積読にしておいたこの本を読むことにしたのは、最近第二版が出て、そちらを購入したので、第二版を読む前にこちらも読んでおくことにしたため。しかし、この本の内容はひどい。北朝鮮本の中でも、単に北朝鮮に肩入れしているだけの駄本。著者は自身が北朝鮮あるいは「共和国」について幻想を抱いたことは一度もないといっている。しかし、この本を読めば著者が北朝鮮に対して根拠のない幻想を抱いていることは明らか。本の内容からわかることは、著者は北朝鮮のことなどほとんど何も知らないということである。だから、「国交正常化後の拉致問題の解決」だとか「改革開放政策をとる北朝鮮との共存」などといったありえない妄想がわきだしてくるのだろう。
またこの本を読んでいくと、アメリカと日本、また独裁体制下の韓国に対する著者の病的な嫌悪感があらわにされている。何のことはない、一昔前に北朝鮮のことを何も知らずに韓国をおとしめていた知識人と著者のレベルは何も変わらない。北朝鮮は好戦的でないとか、朝鮮戦争北朝鮮が始めたことはどうでもよいとか、大韓航空機爆破事件の犯人をあいまいにしているところとか、まああきれたもの。著者はネガティブなナショナリストなのだろう。その対象は、幻想の中で愛着の対象となっている「朝鮮民族」である。著者は自分が国家を信じないといいつつ、実は国家なき民族の虜になっていることを自覚していないのである。
巻末の文献紹介を読むと、そういう幻想が、和田春樹やブルース・カミングスの本で補強されてきたことがわかる。まったくどうしようもない。