富士へ

FMシアター「富士へ」、渡辺いっけい 高橋理恵子 中島陽典ほか出演、小野田俊樹作、真銅健嗣演出、2007/5/26

妻に逃げられた主人公が障害者の施設で働いている女と出会い、スケベ心が手伝ってその女が担当している知的障害者と三人で富士登山に行く、という話。この手の話は、「障害者も同じ人間だ」というよくある紋切り型に終わりやすく、この話もその弊を免れていない。しかし、障害者役を演じている中島陽典(この役者は知らない人)の上手さと話の盛り上げ方で、それなりに聴ける話になっている。
しかし、そもそも主人公が富士登山についていくのは、女への欲望からだったのだが、そのことがいつの間にか消えているのは変じゃないか?主人公が障害者に愛着をもつようになる過程もいまひとつ納得がいかない。主人公が女への欲望について、障害者と妄想の中で会話する場面はとてもよかったと思うのだが。障害者のドロドロしたところをもっと出せればおもしろい話になっていたかも知れないのに。