君はピカソを知っているか

布施英利『君はピカソを知っているか』、ちくまプリマー新書、2007

布施英利によるピカソの入門書。はっきりいうと自分にはピカソの偉大さというものがまだよくわかっていない。そういう人も含めた美術の素人に向けて書かれている。ピカソの生涯、ピカソにいたる西洋美術の歴史、ピカソの作品の三部に分かれているが、この構成は非常にわかりやすい。というか、著者の筆捌きがたくみで、内容が抵抗なく理解できる。特に美術のすごさをあまり図版を使わずに(図版は使われているが、サイズが小さいし、多くはモノクロ)、美術についてあまり知らない者に理解させようとすることはけっこう難題だと思うが、それをここまで鮮やかにやっているのは著者の筆力。たぶん図版の著作権を取ってくるのもけっこうたいへんだと思うが。
ピカソの絵は量が膨大なので、選択は難しいと思うが、ピカソと関係があった女たちに焦点をあてて絵を選んだ視点はすぐれている。画風もさまざま、エピソードも豊富で読ませる内容。