夢窓疎石 日本庭園を極めた禅僧

枡野俊明『夢窓疎石 日本庭園を極めた禅僧』、日本放送出版協会、2005

夢窓疎石の作庭家としての側面に光をあて、夢窓の事跡を作庭と結びつけて論じると同時に、夢窓の庭の構成をひとつひとつ庭のデザインの面から再検討した本。著者は禅僧でありかつ庭園デザイナーという人なので、夢窓の宗教的な思想が作庭にどのように反映しているかを見るのにうってつけの立場にある。
第一章の夢窓の生涯についての部分は知っている人は読まなくてもいいが、第二章以後は禅宗寺院の庭の基本的な構成と見方、夢窓と庭の関わり、夢窓が作った庭のデザイン、といったおいしいところがつまっている。夢窓のそれぞれの庭については、著者自身が作図したていねいな全体図とやはり著者が撮影した写真がついていて、わかりやすい把握が心がけられている。しかし、やはり造園に詳しい読者でなければ、庭の実物を見ながら読むべき本だと感じた。もうひとつ、夢窓の時代、作庭に関わったのが賎民だったことは当然著者は知っているはずで、夢窓が自身、作庭に関わったことにもそれなりの意味があるはずだが、そのことに全く触れていないのは不自然。