冷戦後

船橋洋一『冷戦後』、岩波新書、1991

文字通り、89年のベルリンの壁崩壊から、91年の湾岸戦争終結までの時期のルポルタージュ。未来予測の本ではないので、将来どうなるという断定的なことは書いてないが、それでも転換期にあたって将来を見通すということがどれだけむずかしい作業かということを考えさせられる。結局湾岸戦争が終わっても、新世界秩序は来なかったし、ドイツマルクはユーロに吸収され、ユーゴスラビアはバラバラになって戦争が起こった。またソ連自体が消えてしまった。そういうことがわかってしまった今の時点で読んでみると、船橋洋一はやはり慎重な人で、かつそれなりに洞察力のある人だと思う。やたら日本の過去の歴史認識問題にこだわっているところはちょっと解せないが。
もうひとつは、冷戦というのはやはりヨーロッパの問題であって、アジアはそれとは別の構造で動いていたということに気付かされる。この本自体があまりアジアの問題に触れていないし、何より基本的な構造が当時と今で大して変わっていないのだ。