ビキニ事件の真実

大石又七『ビキニ事件の真実』、みすず書房、2003

ビキニ環礁第五福竜丸事件で被爆し、その後語り部活動をしている著者の事件の記録とその後の半生記。ビキニ事件は被爆者運動のきっかけになった大事件なので、被害者は手厚い保護を受けられたのかと思いきや、そういうわけではなかったことなど、いろいろな裏面の事情がわかって興味深い。著者の感情が、日本政府に対する恨みとアメリカに対する恨みにかなり浸かっているところも、広島、長崎の被爆者運動と比較しておもしろい。
しかし、こちらが一番知りたい部分である、「著者がどのようにして反核活動に関わるようになったのか」がほとんど書かれていないので、それには失望。また、2003年、著者69歳の時に書かれた本だからしかたないのだが、事象が時系列で並んでおらず、しょっちゅう話が飛ぶので非常に読みづらい。また著者が反核運動に関わるようになってから得た考え方に、過去の記述が相当影響を受けているようにも思える。これは他の本で補うしかないか。