北朝鮮に潜入せよ

青木理北朝鮮に潜入せよ』、講談社現代新書、2006

韓国映画シルミド」で話題になった、韓国の対北朝鮮工作員の活動の全貌を描いた本。「シルミド事件」は派遣されるはずだった部隊が、結局派遣されないまま飼い殺しになったことで起こった事件だが、実際は多数の工作員北朝鮮に派遣されており、情報収集、破壊工作、拉致その他の活動に携わっていたという。また派遣された工作員はほとんどが帰還せず、一部は北朝鮮に投降したが、ほとんどは殺されたか、野垂れ死に。しかも戻ってきた工作員は、約束されていた厚遇は受けられず、それどころか極秘の工作活動の情報が漏れることを恐れた韓国政府の監視対象とされ、ろくに職にもつけず、自殺したり、一生を台無しにされた者も多かったということだ。北朝鮮側の工作活動に関しては情報が少ないながら、部分的に触れられている。
映画以外では日本ではあまり知られていない問題なので、貴重な本である。しかしあとがきに記されている、日本の北朝鮮に対する反感を攻撃するためにこの問題を利用しようとする著者のあからさまな姿勢には辟易させられる。