死闘の本土上空

渡辺洋三『死闘の本土上空』、文春文庫、2001

朝日ソノラマから出ていた『本土防空戦』の改題。元のタイトルのほうがよかったような気がするが…。太平洋戦争での本土防空戦を総括した本。まさに刀折れ矢尽き、という言葉の通りで、1945年8月の敗戦時には日本本土の防空戦力は壊滅していた。また欧州戦線で勝った米軍は余剰戦力を投入できる状態にあり、戦力の格差は圧倒的だった。日本軍は米軍に対し物量、技術で劣っていたことはもちろん、防空戦力の組織化や防空の重要性の認識といったレベルで必要なことができていなかった。比較的エピソード的な記述の多い本ではあるが、その中からでも防空戦の実態をいろいろ知ることができる。
本書に望まれるところは、できれば月ごとあるいは半年ごとの日本側と米側の損失数の推移を表にして示してもらいたかったことである。計算が難しければ(もちろん地上撃破をどう数えるか、米側と日本側で数字が違うものをどう数えるのかといった問題があるので)、主要な戦闘だけでも、損失数の表を例示してもらいたかった。こういう本はなるべく定量的な記述が重要だと思うので。