フィデル・カストロ後のキューバ

ブライアン・ラテル(伊高浩昭訳)『フィデルカストロ後のキューバ』、作品社、2006

タイトルはほぼ原題(After Fidel)に即しているが、内容はカストロ以後というよりは、フィデル、ラウルのカストロ兄弟の伝記に近い。キューバの支配体制の現状分析を期待して読んだが、その点はやや外れた。しかし、著者はCIAや軍で長年キューバ分析を担当してきた分析官で、カストロ兄弟のこれまでの軌跡を非常に詳しく辿っている。カストロがどのようにして共産主義者になったか、カストロと反米主義の関係、ラテン(スペイン系)ナショナリストとしてのカストロの側面については、教えられるところが多かった。読んでいて、かつてのソ連社会主義圏諸国の政治分析にとても似通っていることを感じる。政治指導部の分析が中心で、社会と指導部の関係にはあまり大きな関心が払われていない。自分としては、特にソ連からの援助が止まった後、キューバ社会がどう変わったかに焦点をあてた本が読みたいのだが・・・。