ぼっけえ、きょうてえ

岩井志麻子ぼっけえ、きょうてえ』、角川書店、1999

これもいまさら感があるが、岩井志麻子の有名作品といえばコレなので読んでみた。非常にうまい。こんな上手な小説にはなかなかお目にかからない。舞台はどれも岡山の僻村。岡山といっても美作の山間だったり、瀬戸内の島だったり、とにかく貧しく、人もろくに住んでいないようなところ。時代は明治時代の後期。考証もちゃんとしているが、いちばん雰囲気を出しているのは登場人物の岡山弁。著者は岡山の和気出身だということなので、地の言葉としてしみついているのだろう。この言葉遣いがなかったら、ここまでの味は出ていないと思う。表題作はホラー小説大賞だが、ほかの三作「密告函」「あまぞわい」「依って件の如し」も全部いい。自分としては「密告函」「依って件の如し」が好きかな。