ヨーロッパの城と艦隊

アラン・ギイェルム(大山正史訳)『ヨーロッパの城と艦隊』、大学教育出版、2000

原題は「石と風」らしい。そっちのほうがかっこいいが、訳書の題がそれでは内容がすぐにわからないから仕方ないかもしれない。で、「らしい」というのは、驚いたことにこの訳書には原書の出版データ(原題、刊行年、出版社などが何も書いていない。こんなこと、許されるのか?
内容は、古代から現代までの海軍と要塞の歴史なのだが、読むのには非常に苦労させられた。なぜなら膨大な地名、人名、海事、築城関係の専門用語が出てくるので、それらがわかっていないと一読しても内容がさっぱり頭に入らないのである。いくつかの図版と図版解説があるので、船や城の構造についてはそれで少しわかるが、フランスやイタリアの地名、歴史(特に中世史)については、あらかじめ知っていないとどうしようもない。せめてある程度詳しい地図、それから訳注をつけてほしい。著者はフランス語の教員らしいので、仕方ないのだが・・・。
しかし著者が碩学であることは、一読してわかる。古代から現代までの戦史について、このくらい詳しいことを書けるのだから。もっとも第二次大戦時の太平洋の海戦については若干認識不足もないではないようだが。