シビリアン・コントロールとデモクラシー

L.ダイアモンド、M.F.プラットナー(中道寿一監訳)『シビリアン・コントロールとデモクラシー』、刀水書房、2006

1995年にワシントンD.C.で開かれた政軍関係と民主主義に関するセミナーに提出されたペーパーをまとめたもの。オリジナルは1996年に出ているので翻訳はやや遅いような気はするが、この問題に関する重要な論点がきちんと出ているので、十分な価値がある本。アジア、アフリカ、ラテンアメリカやロシア、旧東欧の新興民主主義国、および米ロを含めた国々の政軍関係について幅広い視点から考察がなされていて、政軍関係が「軍の政治的中立とプロフェッショナリズムの維持」というハンチントン的な枠組み以上に幅広い裾野をもった概念であることを教えてくれる。特に私兵、民兵などの公的でない軍事組織を含めて考えると問題は相当深く、困難になることがわかる。
で、本はいいが、翻訳に問題がある。あきらかにおかしな訳語が頻出するし、「モンテネグロウルグアイ)」というような単純な校正ミスもある。基本的に訳者に軍事の専門知識がないので、同じ言葉が章によって違う訳になっている。監訳者が当然責任を負うべきだが、その監訳者の訳しているところがいちばんひどい。訳者あとがきでは、日本における政軍関係の業績を網羅的に紹介していて、その点の労は認めるが肝心の翻訳がこれでは・・・。