「国際化」の中の帝国日本

有馬学『「国際化」の中の帝国日本 日本の近代4』、中央公論新社、1999

同じ中公の日本の近代、通史編の第4巻。日露戦争後、普通選挙制の樹立までの期間、だいたい大正時代を扱う。主題は大正デモクラシーの再検討ということで、明治藩閥政権と昭和軍部政権の間のひよわなあだ花というイメージをもたれがちな大正デモクラシー期の意義を、政党とその他の諸勢力の関係を再検討することで見直そうというもの。読んでいるとこれまで思っていた護憲運動の力が非常に不安定なものに思えてくるし、当時の人々の「デモクラシー」に対する捉え方もあいまいなものに見えてくる。政党各派や官僚、元老、軍部のゲームのひとつの結果としか思えなくなってくるが、これは著者の意図とは違うだろう。普選運動、社会主義運動、労働運動などさまざまな社会運動の位置づけについてはとても参考になった。