北朝鮮「楽園」の残骸

マイク・ブラツケ(川口マーン恵美訳)『北朝鮮「楽園」の残骸』、草思社、2003

著者は、ドイツのNGOカップ・アナムーア」、「ドイツ世界飢餓援助」のメンバーとして四度訪朝、本書は1999年から2003年までの北朝鮮の状況についての記録。ノルベルト・フォラーツェンと同じ団体(職務は違うが)で、特に目新しい情報があるわけではないが、フォラーツェンの独特な思い入れの強い文章に違和感を感じる人でも、この本にはあまり抵抗を感じないだろう。本書の主な価値は豊富な写真にあり、平壌の記念建造物から、地方の学校、病院、農村、建設現場まで、さまざまな風景の写真が載せられている点は貴重。著者は旧東ドイツで幼少期を過ごしたためか、北朝鮮の状況を他のドイツ人より素直に受容できたというくだりは興味深い。箱の中で生活を送ってきた人間はそもそも箱の外に何があるのかということにさして興味を持たないものなのだ。