韓国人のナショナリズム

鄭大均『韓国人のナショナリズム』、岩波現代文庫、2003

著者は在日韓国人の日韓関係研究者。文庫化される前の単行本「日韓のパラレリズム─新しい眺め合いは可能か」は1992年刊行。著者の主張には今まで断片的な形で触れていたことはあったが、一冊通読したのはこれが初めて。

随所におもしろい発見のある本。韓国におけるナショナリズム反日感情については、既知のことなのでそれほど目新しい印象は受けなかったが、日本敗戦後の米軍政下で日本文化の遺物がどのように扱われたかなどの部分はこれまでまったく知らなかったこともあり、非常に面白かった。また在日韓国人に限らず、在外韓国人に対する韓国内の反応(特に彼らがトラブルに遭遇したときの反応)には非常に興味深いものがある。基本的に、在外韓国人は本国のナショナリズムを鼓舞する材料として扱われているのである。まあ多くの在外韓国人は一世世代であり、本国との文化的な連帯も残っているから、それには理解できる部分もあるが。

しかし本書を読んでも相変わらずわからないのが、韓国のナショナリズムはいつからどういうプロセスで形成されてきたのかという問題である。著者は朴政権時代の教育などの影響を重視しているようだが、それでは、李政権時代の反日的な政策や、米軍政期の「神社打ち壊し」などは説明できないだろう。これは木村幹とか、歴史系の本を読んでみないといけないようだ。