人権を疑え!

宮崎哲弥(編著)『人権を疑え!』、洋泉社新書、2000

ずいぶん前に買っていたのに目を通していなかったのでいまごろ読むことになってしまった。内容は執筆者によってばらばらで玉石混淆。いちばんまともなのは編著者の宮崎哲弥の「人権論の再構成」。しかし、これもスタンダードな法律学の議論を整理したもので、特に目新しい論点をあげているわけではない。しかも最後のところで「人間らしい暮らし、人間らしい生存は普遍的倫理の基礎となりうる」というようなことをいっている。書名と矛盾しているのではないか。

あとおもしろかったのは刑事裁判の実務で「人権」がどう扱われているかを語った山口宏「裁判所は人権の砦ではない」あたりか。片岡鉄哉「人権は国家主権を超えられるか」はちょっと乱暴な議論をしているが、国家権力と人権との関係、自然権としての人権と法で保障された市民権との違いについての記述はいいと思う。

しかしその他の論稿はどうか。呉智英はまあ相変わらずいっていることを改めて書いているだけなのでいいとして、佐伯啓思のものは論旨がぐちゃぐちゃ。高山文彦のものは半ば私怨。定方晟のものは論点がずれていると思う。企画はいいとしてもうちょっと編者は原稿に注文をつけるべきではないだろうか。