移民と現代フランス

ミュリエル・ジョリヴェ『移民と現代フランス』、鳥取絹子訳、集英社新書、2003

フランスにおける移民問題を、主に移民本人や援助組織の関係者に対するインタビューを通じて明らかにしようとした本。マクロの統計数字ははじめのほうに若干あげられているが、著者の目的はそうした数字の動きを通じてではなく、関係者の肉声を通じて移民がフランス社会に及ぼしている影響と問題を明らかにしようとすることのように見える。

一読して印象深いのはフランスでは移民を「同化」することが、ナショナルな合意になっていて、ネイティブのフランス人、移民出身のフランス人、不法滞在者、移民の援助団体などのいずれの人々からも同化を否定する意見は出ていないこと。もちろん、同化は移民の出身社会の文化を否定しようとするものではないが、基本的にはフランスの言語と文化に移民の側が入っていくことが求められている。アメリカなどのコミュニタリアンな考え方や日本でもよく言われる「少数派の権利」などはあまり問題にされていない。必要なのは少数派の特別な権利なのではなくて、移民をフランス社会に同化させ、フランス人と同じ権利をもたせることだとされているからだ。著者は、移民排斥論者にはインタビューをしていないが、そうした論者も「共和国主義」なので、同権という考え方には反対ではない。

日本も基本的には同化主義的な政策をとっていると思うがフランスのように同化主義が国民的合意になっているとまでいえるかどうかは疑問。日本とフランスの同化主義にどういう差があるか、差があるとしたらそれはなぜか、というところまではこの本だけではわからないのだが・・・。