京都議定書は実現できるのか

石井孝明『京都議定書は実現できるのか』、平凡社新書、2004

京都議定書採択以後の、議定書の削減目標達成に向けての努力と問題点を日本に関して述べた本。日本における温暖化ガスの削減コストは高く、国内実施のみで議定書の削減目標を達成することは困難。新エネルギーや原発はいずれも解決手段にはならない。産業部門での削減は限界に近く、民生、運輸部門での削減は監視コストなどの面で現実性に欠ける、というような事情が解説されている。

現実的には炭素税の創設と後は排出権取引で外国から買うしかないだろうが、著者はいずれにもあまり好意的でない。炭素税は効果はあるが、税の使途が問題、排出権取引は「空気」を買うために巨額の資金が外国に流れるだけで、しかも足元を見られて価格を吊り上げられる可能性がある、ということだ。著者は、基本的に国別に削減目標を課す京都議定書の方式自体に批判的である。この方式では途上国は削減を受け入れないし、そうなるとアメリカも入ってこない。国際的な温暖化防止への協議体を立ち上げて、部分ごとにできることで国際協力を積み上げていくしかないという見解のようだ。しかし、国別の削減目標なしで、温暖化防止への十分なインセンティブが働くかどうかは疑問のように思われるが・・・。