人間は遺伝か環境か? 遺伝的プログラム論

日高敏隆『人間は遺伝か環境か? 遺伝的プログラム論』、文春新書、2006

タイトルにひかれて買ってみたが、どうもいまひとつ著者の主張がよくわからない。まず生物の形成が遺伝か環境かという二者択一ではないこと、遺伝的プログラムによっていて、その発現には環境の影響があるが、プログラム自体は遺伝的に決まっていること、遺伝的プログラムは個々の遺伝子に書き込まれているのではなくて、その生物種に固有のものであること、といった話はわかる。問題は著者が何を説明したいのか、何がいいたいのかということで、そこのところが本論だけではよくわからない。

最後の部分に佐倉統との対談が載っていて、それを読むと著者が何をいいたかったのかがちょっとわかってくる。佐倉は遺伝的プログラムの上に社会的プログラムがのっかっていて、それが個体差、集団差のひとつの原因になっているという話を持ち出し、そういう説に対して著者は消極的なのだが、どうも著者は文化の差によっては変わらない生物種として決まっている普遍的な部分を強調したいようだ。それならそれでいいが、どういう部分が普遍的なのかをもうちょっとちゃんと説明してもらわないと、読んでいる方は遺伝的プログラムという概念の意義がわかりにくくなってしまう。