石油を読む

藤和彦『石油を読む』、日経文庫、2005

石油市場の最近の状況についての分析と石油市場全体の基本構造についての解説。後者の部分は著者のこれまでの著書の焼き直し。現在の石油価格の高止まりの原因について知りたかったので手にとってみたが、著者の指摘する原因は、アメリカの在庫政策の失敗、中国の経済原理を無視した資源の囲い込み、供給側各国の国内問題といったこと。しかし、底値圏だった2002年初頭に比べて約4倍、70ドル台という現在の価格水準はこれらの原因で説明がつくのだろうか。

著者によれば石油市場の構造からして、価格の乱高下は不可避で10年くらいの単位で平均値を取らないと価格の水準を見ることはむずかしいということなので、「そういうもの」と思うしかないのかもしれない。それにしても著者が提唱するような、パイプライン網の建設による天然ガス利用への転換について、具体的な政策はとられているのだろうか。電力、ガス各社間の調整問題や漁業補償のようなことでガス転換がちゃんとできないのであれば、とても大きな損失だと思うのだが。