教養主義の没落

竹内洋教養主義の没落』、中公新書、2003

大学における「教養主義」、つまり小難しい本を読むことで人格形成することがえらいという考え方がどうして起こり、どのように滅びたかということについての本。著者によれば大学での教養主義は大正時代に起こったものだが、戦後に絶頂期を迎え、1970年代以後急速に消えていったという。その主な理由は、教養に対して実践的な知識が「役に立つ」知識としてそのお株を奪ったこと、日本社会の階層性が失われることで、知的階層化の道具だった教養主義の意味がなくなったことだという。

いまの学生が本を読まないことといえば半端ではないし、そもそも本を読むことの必要性自体を感じていない。また読むべき本のスタンダードもない。著者よりは年代的にだいぶ若い世代の自分でも、そういう考え方をふしぎに思っていたが、この本でだいたいのなぞは解けた。それにしても戦前の大学ではいまより比較にならないほど、卒業学部と就職先との関係付けが強かったこと、マルクス主義が知識人の世界で果した役割、ほかいろんなことがわかってとてもためになった。いろんな意味でお得な一冊。