核拡散

川崎哲『核拡散』、岩波新書、2003

核拡散の現状について概観した本。2003年末までの比較的新しいデータが載っており、書き方もわかりやすい。そういう点では評価に値する。

しかし肝心の内容はひどいもので、要するに反核運動の宣伝本。著者には核拡散の現状を客観的に把握するということと、自分のイデオロギーの宣伝の区別がついていない。核廃絶を希望するということと、その希望の客観的な実現可能性を評価することとは違うという基本的なことがわかっていない。北朝鮮イラクに関する著者の記述は、北朝鮮フセイン政権下のイラクによるアジテーション同様。このようなことをいっているようでは、日本の平和運動のレベルが窺い知れる。