トラちゃん

群ようこ『トラちゃん』、集英社文庫、1989

著者の飼ってきたペットにまつわるエッセイ。奥付を見ると初刷が1989年だが、自分が持っているものは2000年で44刷。驚いた。

金魚、インコ、十姉妹、文鳥、犬、猫、モルモット、ハツカネズミという取り上げられている動物がどれもとても人間っぽい。犬や猫はまあわかるが、モルモットやハツカネズミまでこんなに人間的な反応をする動物だとは知らなかった。それに出てくる動物がみんなかわいい。動物自体のかわいさということもあるが、それ以上に著者とその家族が動物たちに素直な愛情を向けているからだろうと思う。著者のいつもの人間に対する斜に構えた視線とはまるっきり違っている。

わたしは高校生のときまで団地住まいだったので、実家は動物を飼えなかった。母親の実家が犬を飼っていたのを帰省のたびに一緒に遊んだくらいのものだ。しかし今でも祖父母のことよりも犬のことをより強く思い出す。理由はよくわからないが、著者が動物たちに向ける愛情と一脈通じるものがあるかもしれない。しかし人間だと愛情を向けることがこんなにもややこしいのに、動物だとどうして素直になれるのか。単に自分の性格に問題があるからかね。