川の流れはバイオリンの音

「川の流れはバイオリンの音」、中尾幸世主演、佐々木昭一郎演出、NHK製作、1981

前作「四季~ユートピアノ~」の続編にあたるような作品だが、主人公がピアノの調律師という以外は微妙に設定が違っているので厳密な意味では続編とはいえないらしい。イタリア、ポー川の流域、クレモナの町の周辺で話は進む。主人公はバイオリンを直してもらうためにイタリアを訪れ、そこでさまざまな人々と会う。

主人公は前作と同じなのでもちろんいいのだが、他の登場人物(イタリア人)がとてもいい。多くは老人(子供もいるけど)だが、とてもいい年のとり方をしている。クレモナの鐘楼の堂守にいたるまで、みな言い味を出している。ジプシー(この言葉も今は使えないことが多いが)のバイオリン弾きも訥々としていて、いい。登場人物の老人たちは次々と死んでいくが、そこにはウェットな悲しみのようなものはなく、川の流れのようにたんたんと出来事がおき、人はそれをすなおに受け入れていく。なんともいえない余韻の残る話。