告白

チャールズ・R・ジェンキンス『告白』、伊藤真訳、角川書店、2005

ブックオフに出ていたので(いずれ文庫化されるだろうとは思ったのだが)、思わず買ってしまった。内容的には特に驚くようなものではないが、とてもおもしろく読めた。特に、北朝鮮での生活上の細かい苦労(暖房設備の手入れや農園の管理など)については、ある程度「特権的な」地位にいる者といっても、北朝鮮での生活は先進国のそれとは質的に違っていることを改めて認識させられた。

また、曽我ひとみが単身で帰国した後の著者の心境が興味深い。長い間出ることのできない牢獄に暮らした者、発言が厳しい罰に直結するところで暮らした者は、自分の意思を自由に持つということ自体が困難なのだということを認識させられた。この本の価値は、自由というものの価値に対して逆説的なところから光をあてている点にあると思う。