ふるさとに寄する讃歌

坂口安吾『ふるさとに寄する讃歌』、角川文庫、1971

安吾の初期の短編集。表題作よりも「黒谷村」のほうがいい。何もかもがドロンドロンした空気の中でうごめいている感じが好きだ。あと「姦淫に寄す」「波子」もよし。しかしどれも死とセックスばっかし出てくる。死とセックスに両腕をひっぱられて身動きができなくなっているような感じだ。わたしは今のところどっちにもあんまりひっぱられてないので、このドロドロした力にはいまひとつ実感がわかないのだが。