働く過剰

玄田有史『働く過剰』、NTT出版、2005

若者と仕事に関する著者の見方をデータに即した分析をもとにして提示する本。「働かされすぎる」正社員を主に扱う第一部と、「働けない」ニート、無職を扱う第二部、若者と仕事に対する大人の態度を扱う第三部に分けて論じている。著者の考えでは、働き過ぎの正社員、働けないニート、無職者の問題は、仕事に対する適切な距離をとれないことに由来していて、その問題の所在は「即戦力」などの過剰な期待を若者に求める大人のほうにあるのだという。非常に著者の主張がはっきりした本だが、その根拠もまた客観的に明確な形で示されていて説得力がある。特に「若者に対して仕事で即戦力たることを求めること自体が基本的に間違っている」という著者の考えにはうなずかされるものがある。コンピュータをいじれたり、語学の能力があるからといって、それが「仕事における即戦力」にはなりえないというのはその通りで、人材育成ということの意味を再考させられる。