安吾史譚

坂口安吾安吾史譚』、角川文庫、1973

坂口安吾の歴史関係のエッセイと紀行文。いってることはけっこうハチャメチャな気もするが(特に「道鏡童子」の項)、著者自身が「想像だ」といってるのだからまあいいでしょう。「柿本人麻呂」はこれもかなり想像が入ってるが、おもしろい。まともな人から相手にされないというのはある意味詩人のさだめなのかもしれない。「直江山城守」(なぜ兼続と本名を記さないのか?)もまあまあ。紀行文「安吾新日本風土記」は著者の死で中断してしまった作品だが、これもけっこうおもしろい。司馬遼太郎などとはかなり違った味だが、そのあたりも安吾らしくてよいと思う。角川文庫の坂口安吾の作品にはていねいな解説と年譜がついているのだが、なぜ他の著者でもこういうことをしてくれないのか?坂口安吾が故人で大作家だというだけのことなのか、他に理由があるのだろうか。