大久保利通

毛利敏彦大久保利通』、中公新書、1969

これも古い版の大久保利通の伝記。読んだのは1987年刊行の第16版。それだけ版を重ねているだけのことはあり、維新前後の政情と大久保利通の生涯が立体的にきちんと構成されている。一読して、明治維新という大変革がどれほど大久保、西郷ら維新の元勲らの「人の力」に依拠していたかを考えさせられる。一再ならず企図をくじかれながら、ついに幕府を倒して維新回天の大業をなしとげたのは、大久保という大政治家の意志の力の作用である。M.ウェーバーの政治家像をそのまま人間にしたような強烈な意思はそうそう誰にも宿るものではない。個人的には薩英戦争以前の薩摩の攘夷論に対する態度についての誤解を気づかされ、勉強になった。次は最近出た大久保伝も読まなければ。