ドイツは苦悩する

川口マーン恵美『ドイツは苦悩する』、草思社、2004

福祉、教育、環境、離婚、イスラム教徒、統一後の旧東ドイツといった切り口からの現代ドイツ事情の紹介本。副題に「日本とあまりにも似通った問題点についての考察」と付されているが、読了して納得。とにかく非常におもしろい。特に福祉、教育については、ドイツの制度は日本と比べても非常に「平等主義的」なのだが、その程度はもう想像を絶している。日本が「社会主義的」だというのは、冗談でよく持ち出されることだが、日本の平等主義は社会的に限定された空間でしか成り立っていないから、ドイツのそれとは規模が違う。これだけ福祉が充実していれば、財政破綻は当然だろうし、これだけ平等主義的な教育が普及すれば教育水準は落ちるだろう。日本と比べるといろんな示唆に富んでいる本。著者は非常にあくの強い考え方をもった人だと思うが(メディアの章とかを読むとちょっと?と感じるところがある)、そのことはこの本をいい意味でおもしろくするためにとても貢献していると思う。テーマとして日独比較によく取り上げられる歴史認識とかを持ち出さなかった点も成功している。