首相支配

竹中治堅『首相支配』、中公新書、2006

最近10年の政治的変化を「首相支配」の誕生として論じる本。清水真人「官邸主導」が政策決定過程での官僚支配に対する官邸支配の強化を議論していたのに対して、この本では自民党内の派閥支配から首相支配への移行を主に議論している。従って、分析の対象になっているのは自民党内での派閥や個々の国会議員に対する首相の権力の強化である。細川内閣退陣以後の政局的なできごとが、どのように首相支配の強化に裏付けられていたかが説得的に分析されている。やや分析に疑問があるところは参院の持つ権力の強化に関する部分だろうか。確かに参院には首相の解散権は及ばないのでその分、衆院に比べて首相支配の及ばないところはあるだろうが、参院は3年に一度の選挙を抱えており、衆院の並立制と一部似た選挙制度になっているから、首相の選挙における影響力は大きいはずである。また、参院の力が、個々の参院議員の力でなくて青木参院議員会長個人の権力強化になっているところも説明を要すると思う。