中国はなぜ「反日」になったか

清水美和『中国はなぜ「反日」になったか』、文春新書、2003

中国での「反日」の噴出をはじめとする対日姿勢の変遷を歴史的に検討した本。著者は長年中日新聞で中国報道を担当していて、中国側の事情については知悉している。

現在の中国の「反日」態度の直接の原因は90年代半ばからの江沢民政権による愛国キャンペーンだが、日中間の摩擦はそれ以前からも歴史問題を中心に頻発していたことが示される。簡単にまとめれば、中国は歴史問題をカードに使って、日中関係を自国に有利な方向にコントロールしようとしてきたが、98年の江沢民訪日の失敗以来、そのカードは有効性を失ってきており、逆に中国の草の根レベルでの反日感情の噴出は上からのコントロールがきかないものになりつつあるという。全体的に見れば常識的な情報を要領よくまとめているという感じだが、江沢民訪日の細かい事情、中曽根が靖国神社参拝を中止した事情など、参考になるエピソードもいろいろと盛り込まれている。