戦争の記憶をさかのぼる

坪井秀人『戦争の記憶をさかのぼる』、ちくま新書、2005

敗戦後の戦争に関する記憶形成を理解するために、何かしら有益なところがあるかと思って読んでみたが、その期待はまったく裏切られた。はっきりいうと、著者の「譫言」の羅列以外のものになっていない。まだましなのは、1955年から10年ごとに戦争に関する言説の変化を追っている第三章あたりか。しかし、これもオウム教団のメンバーと高市早苗は「外界への窓を閉ざしたサティアンから世界の切断へと向かった」という意味でいっしょだ、などと意味不明なことをいっている。自分の思考に、戦争に関するいろんな事実を適当に貼り付けて正当化しようとしているだけである。もう読むだけ時間の無駄という駄本。