憎悪の宗教

定方晟『憎悪の宗教』、洋泉社新書、2005

仏教学者である著者が、ユダヤ、キリスト、イスラムの三つの一神教を「聖なる憎悪」をその核心におく宗教として批判する本。キリスト教に対して相対的に多くの頁が割かれている。確かに聖書には常識的な道徳から見れば明らかにおかしなことがたくさん書いてあるし、著者のいうような批判も成り立つ余地がある。しかし読んでみてどうもつまらない感じがするのは、そういう常識的な道徳の立場から宗教を批判しても「だから何?」といいたくなるからだ。著者はこれらの教えが憎悪と残酷さにもかかわらず人をひきつけている理由を、「子どものころから慣れさせられているから」「行動力、エネルギーの高さ」といっているのだが、どうも腑に落ちない。宗教の外側から宗教を見ても、それで宗教がわかったことになるのだろうか。