公安化するニッポン

鈴木邦男『公安化するニッポン』、WAVE出版、2005

鈴木邦男が元公安関係者(公安警察公安調査庁)4人と対談したものをまとめた本。あまり上の階級まで昇進した人はいないことと、退職したとはいえ暴露の内容に一線がひかれているので、それほど新味のある内容ではない。また外事担当の経験者はいないので、あくまで公安の国内活動に限られた記述内容になっている。

主な内容は共産党新左翼、右翼に対するスパイ活動であるにもかかわらず、対談相手がみな「これでは外事関係に対するスパイ活動はできない」と断言していることは興味深い。スパイ工作のやり方自体が非常に「日本的」だし、保秘も十分だとはいえない。スパイの調達のやり方、公安警察官のリクルートの仕方といった点についての記述は、既出の部分もあるがそこそこおもしろかった。

鈴木邦男は公安の対象者だという点もあって、公安の活動に(市民的自由の侵害という点で)非常に危機感をもっているが、それはともかくとして諜報機関としての公安の活動についてはこれはたいしたことがないという印象を受ける。公安警察の存在意義に疑問が出されるのも当然だろう。