戦争民営化

松本利秋『戦争民営化』、祥伝社新書、2005

タイトルの割に内容の薄い本。はっきりいって、2章から4章までは全部いらない。かつての戦争では傭兵が使われていたことは周知の事実だし、個々の戦闘での傭兵の戦いぶりは、「戦争民営化」というこの本の主題に関係ない。傭兵の歴史について書きたいのであればそれなりの準備が必要で、特に傭兵の雇用側と被用者側の関係について、国民軍制度が登場した後の傭兵制について、それなりに整理して書くべきだ。兵器販売ビジネスの話などは本書の内容から完全に浮いている。

本書で読む価値があるのは5章「現代の戦争ビジネス組織」だけだが、この部分の書き方が整理のついていないバラバラなもの。戦争ビジネスに関わる企業の業務を、兵站支援と警備に大別しているのだから、その二つの分野について、企業がどこまで軍の業務を代行できているか、軍にとってのメリットは何か、そのような「戦争民営化」がなぜ起きているか、整理して書けばもっとわかりやすくなっているはず。そういう部分が章のあちこちに分散していて、さらにハリバートン社の不正のような問題が途中で挿入されていて、結局何がいいたいのかがよくわからない本になってしまっている。